ハコイリ♡ムスメ「ハコムス宝くじライブ」密着取材レポート!


~ハコムスライブ、下から見るか?横から見るか?“柵の前”から見えたもの~

文・写真:月河=つきりん

「○○喫茶、いかがでござるか~!?」。2017年9月30日、土曜日。今日も秋葉原はメイドと、忍者と、観光客と、そして溢れ返るヲタクで大変な賑わいを見せていた。そんなアキバの一角、メイド激戦区と呼ばれる通りに悠然と佇む商業ビルAKIBAカルチャーズZONE。その裏側、従業員通用口に、我々取材班はいた。

「ハコ♡ムス宝くじ」。アイドルグループ、ハコイリ♡ムスメが定期的に開催しているイベントで、様々な賞の中から好きなものを選択して抽選番号を購入し、後日その番号が当選すれば該当の賞品が得られるという企画である。その第4弾が2017年9月に開催された。今回は新たな賞が多数設けられ、内容が大幅にパワーアップ。まず通例の「ハコムス宝くじライブ」の入場権が得られるハコくじ賞を始め、宝くじライブのセットリストや衣装を決定できるハコイリ賞、メンバーからお手紙の返事が貰える箱文(はこぶみ)賞など。それらに加えて、ハコムスが行っている無料の屋外定期ライブ「ハコムス野外音楽会」での衣装を完全プロデュースできるハコーディネート賞、好きなメンバーに好きな楽曲を歌ってもらい、更にCDにして貰えるジュークボックス賞など、その他にもファンにとっては非常に魅力的な様々な賞が追加されたのだ。

一方、ハコ♡ムス宝くじ第2弾より毎回恒例となったのがムスメ賞。ハコムス宝くじライブの様子を、メンバーの会場入りからリハーサル、そして本番に至るまで全てハコムス専属記者として一日まるっと密着取材できるという賞である。今回そのムスメ賞に当選したのが、P氏、F氏、そして私を含む取材班3人であった。何を隠そうこの3人、全員が過去にこのムスメ賞に当選した経験があり、それぞれに密着取材レポートを記事としてPigoo Factoryのホームページに掲載していただいている。というわけで過去の私のレポートはコチラ↓(自己主張の強いヲタク)。
ハコイリ♡ムスメ「ハコムス宝くじライブ」に密着取材!ハコムスライブのオモテもウラも“ヲタク2人”が全部見てきました!
前置きが長くなったが、つまり我々がAKIBAカルチャーズZONEの通用口にいるのは、この地下に存在するAKIBAカルチャーズ劇場にて開催される、第4回ハコムス宝くじライブの密着取材行う為であった。


13時50分。ハコムスのプロデューサーである鈴木氏に案内され、通用口からカルチャーズZONE地下へと続く階段を下りる。その先にある扉を開けると、眼前に“あの”廊下の光景が飛び込んできた。P氏とF氏は前回もカルチャーズ劇場で取材を行っているが、私にとっては初めての経験だ。
 

〈え~!見たことある~!(興奮)〉


14時。その廊下にある別ガラス戸の向こうは通用口側とは真反対、カルチャーズZONE正面への出入口へと繋がっている。鈴木Pより渡された「AKIBAカルチャーズ劇場 PRESS」と書かれたお馴染みの赤い腕章を腕に巻き、取材班はメンバーの会場入りをそこで待つことになった。さて、このメンバーの会場入りというのがとてもシビアな時間だ。世の報道カメラマンがシャッターチャンスを逃さぬよう、どれだけ神経を研ぎ澄まし細心の注意を払っているか、身を以って知る瞬間である。前回のようなミスがあってはならな 来てぁ!!!

早い!芸能人かよ!!(芸能人です)
メンバーの素敵な私服姿をもっと見たい!という方は、ぜひ他の受賞者のレポートも読んでいただきたい。
さて、メンバーの会場入りが無事に完了し、本来ならばここですぐインタビューを行わせていただく予定だったのだが、メンバーの星里奈が学業の都合で会場入りが遅れるとの情報が入る。その為リハーサル開始まで空き時間となった。控え室に籠るのも何なので、我々取材班は一旦取材という責務を忘れ(スミマセン)、しばしヲタクに戻ってカルチャーズ劇場の壁という壁に刻まれた歴史探訪に没頭することにした。

〈渡辺美奈代のサイン〉

〈今や多くのアイドルの登竜門〉

奇しくも今回ハコムス宝くじライブが開催された9月30日の翌日10月1日は、AKIBAカルチャーズ劇場の記念すべきオープン日であり、2017年で当劇場は4周年を迎える。この壁に記されているのは、その4年の間に劇場にてライブを行った数多のアイドルたちの魂の刻印だ(ヲタク全開)。ハコイリ♡ムスメは、そんな歴史あるカルチャーズ劇場をホームとして、デビューから活動を続けてきた。ハコムスは、今やカルチャーズ劇場を代表するグループと言っても過言ではないのだ。


はてさて、メンバーの楽屋からは賑やかな声も聞こえ始めた。空き時間ができたということでメンバーも暇を持て余しているようだ。この時間を利用して、今回の宝くじ当選品の数々にサインやコメントなどを入れる作業も始まった。

寺島と戸羽は廊下で振付の確認を始める。岩手県在住の為なかなかレッスンに参加できない戸羽の練習に、寺島がよく付き合っているのだそうだ。そんな2人の自主練習を最早ただのヲタクに戻ったF氏が猛烈なフリコピをしながら見ていた。

〈ロックオン賞景品にコメントを書く我妻〉


そんな折、事件勃発。井上と吉田のケンカ である。「誰が悪いの!!」。見かねたリーダー我妻。どうやら井上による吉田へのちょっかいが、他のメンバーも巻き込んで騒動となっているようだ。事の流れを話す内、遂には泣き出す井上。すかさずスマートフォンを取り出し、動画撮影を始める我妻。なるほど、ハコムス公式twitterやyoutubeチャンネルに上がる舞台裏の映像は、このように撮影されているのだろう。それにしてもなんと賑やかな楽屋裏だろうか。おそらくはケンカ以外にもこんな楽しい風景は日常茶飯事なのだろう。撮り溜めている動画が今後公開されることに期待だ。

〈責務を忘れたF氏〉


15時。ここで星里奈が到着。いよいよリハーサルが開始された。リハーサルはセットリストに添って一曲ずつ確認されていく。現在パフォーマンスの確認作業などは我妻と鈴木Pの2人が中心となって行われているようだ。振付やフォーメーション等ひとつひとつを丁寧に見直していく。真剣なメンバーの表情。プロデューサーの厳しく光る目。張り詰めた空気の中、ついついフリコピしてしまうF氏。

実はこのリハーサルでとある事件が起こったのだが、それは後述することにしよう。


16時30分、開場。続々とファンが入場し、劇場内も賑わってきた。それに呼応するように楽屋から再び活気溢れる声が聞こえてくる。MCの内容や進行の確認が行われ始めたようだ。やがて衣装に着替えたメンバーが出てきた。廊下は全体的に少し慌ただしく、ギリギリまで振付を確認するメンバーもいた。


16時55分、ライブ開始5分前。メンバーが円陣を組む。今やファンの間でも知る人は多くなったであろう、恒例の掛け声と共に気合いを入れる。ちなみに前回F氏が取材したときにあった“見せパン点呼”は無かった。至極残念だ。(気になる方はF氏の過去のレポートを参照してほしい)。ライブが始まるということで、取材班も準備に入る。今回は“最前柵”の前に入って撮影することができた。他の2人とは異なり、これも私にとっては初めての経験だ。

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17時、定刻通りにライブスタート。1曲目は中山美穂の『色・ホワイトブレンド』。続く2曲目の『真夏の恋のファンファーレ』は、今夏のハコムスのオリジナルソングの一つ。ひと夏の恋によって成長する男性を描く、少し切ないナンバーだ。序盤はこの2曲で穏やかながらも力強い表現力を魅せた幕開けとなった。
『色・ホワイトブレンド』について、「加入した当初のことを思い出した」とMCで語る寺島。今回のハコイリ賞当選者によるセットリストのコンセプトはハコムスの歴史。当選者曰く、ハコムスがデビューした2014年から現在までを年ごとに区切り、それぞれから2曲ずつ選んで作成したとのこと。最初の2曲は2017年4月以降に歌われた曲であった。その他、最初のMCでは他の賞の説明や、我々ムスメ賞当選者を含む各賞の当選者についても少し触れられた。ジュークボックス賞は世界に一つだけのCDを作成してもらえるということだったが、井上曰く「ぜひ他のファンの方にも貸してあげて、お友達になってほしい」とのことだそうだ。
3曲目はアイドリング!!!の『ガンバレ乙女(笑)』。実は楽屋裏でF氏が耐え切れずフリコピしてしまった曲がこれだったのだが、F氏と同じようにハコムスファンの中にはアイドリング!!!ファンも多く、故にアイドリング!!!の楽曲に思い入れのある人も多い。一気に盛り上がりを見せた会場内。続く4曲目『ガールズ・オン・ザ・ルーフ』は3期生がフォーメーションの中心となる曲。一年前の取材時よりも遥かにパフォーマンスを向上させた3期生3人は、観客の視線を釘付けにするのだった。因みにこの2曲は2016年にハコムスがカバーした曲である。

2つ目のMCトークテーマはハコイリ賞当選者プレゼンツ『今後ハコムスでやってみたいこと』について。寺島は自分含め4期生がまだ経験したことがない「MV撮影をしてみたい」とのこと。塩野はライブツアーがしたいようで、「関東を制覇したい!」と意気込む。「ファンの人たちと料理を作りたい」と言った料理上手な戸羽に対し、吉田は料理を作るのではなく「皆でスイーツを食べに行きたい」とのこと。
井上は「海外でライブがしたい」らしく、海外ならば会場が小さくても構わないくらいの熱望だ。星は「和のテイストがあるところに行きたい」という、星らしい希望を語った。我妻は過去に行った船上ライブが楽しかったらしく、「ハコムスでクルージングライブができたら」と言う。様々な希望が出たが、概ねどこか外の特別な場所でのライブや、ファンと一緒に何かをするイベントを所望しているメンバーが多いようだ。実現が簡単そうなものから難しいものまであるが、良い機会だということで一同は改めてしっかりとスタッフに向けて頭を下げてお願いした。
再びライブに戻る。続いては2015年度のハコムス楽曲から、まずは小道具に傘を使用する『アンブレラ・エンジェル』が披露された。くるくると傘を回す振付が美しい一曲だ。続く6曲目の『じゃあね』は2015年度・冬のハコムスにおいて内山珠希の卒業ソングとしてカバーされた楽曲であり、今回は10月で高校受験に向けて活動休止に入る星がセンターを務めた。

ライブ本編もいよいよラストスパート。現在の活動メンバーで唯一の初期メンバーであるリーダー我妻が「最後はハコムスがデビューした2014年に歌った曲です。当時泣いたこと、怒ったこと、笑ったことなど沢山の出来事を思い出します。」 と話し、Berryz工房の『ありがとう!おともだち。』とribbonの『Be My Diamond!』が披露された。

ハコイリ賞当選者のセットリストはここまで。ライブ最後の曲は、特賞当選者が選んだ新カバー曲。当選者曰く「ハコムスがカバーする曲はリアルタイムで聴いたことがなく、毎回初めて聴く曲が多いが、この曲だけは自分でも知っているくらい有名」とのこと。披露されたのはribbonの『リトル☆デイト』。テレビアニメの主題歌にもなったことのある曲であるが、そのアニメに出演している声優陣がカバーしたということもあり、アニメファンにも広く知られている名曲だ。大人っぽい歌詞と、途中に入る台詞パートを持ち前の表現力で見事に歌い上げたメンバー。こうして、第4回ハコムス宝くじライブは幕を閉じた。

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ライブ後に楽屋裏に戻ると、アップアップガールズ(仮)古川小夏にメンバーが挨拶をしているのを目撃。10月の定期公演から古川が振付を担当した曲が披露されるとのことらしく、この日ライブを見学しに来ていたようだ。ハコムスとアプガ。この関係は一見異色だが、古川小夏の感性がハコムスに新たな風をもたらし、その世界観を広げていくことに、とても期待できよう。

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ライブ後は各賞当選者への景品の受け渡しや、グッズ購入者対象の特典会が行われた。そこで今回もしれっと握手会に参加してみた。

記者「お疲れ様でした!」
井上「なんで記者の人がここにいるんですか?」
記者「いや、ちょっと握手会もレポートしようかと思いまs
井上「良くないと思います。」
記者「え。」
井上「仕事とプライベートをちゃんと分けないの、良くないと思います。」
記者「いや、そもそもこれ仕事じゃn
スタッフ「お時間でーす。」

中学一年生にしてこの円熟したスタンス。彼女たちもまた、仕事に真摯に向き合うプロフェッショナルなのだ。まあ私は仕事ではないのだが。
このように個性溢れるメンバーと交流もできるので、ライブの感想などを伝えに特典会にもぜひ参加しよう!!

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【インタビュー】


特典会終了後にメンバーへのインタビューを行わせていただいた。他の記者2人が行ってくれた質問もあるので、ぜひ2人のレポートもご覧いただきたい。私の方ではちょっとだけマジメな質問を投げかけた。また、先述したリハーサル中のとある事件についてもここで記す。ライブ後で疲れているにも関わらず、貴重な時間を提供していただいたメンバー、スタッフの皆さんに、改めて感謝申し上げます。


吉田「楽屋がものすごく賑やかになりました!年齢が近い子が増えたのでわちゃわちゃしています。虹とかが面白いことをやって盛り上がると、3期生も盛り上がって、全員ワ~ッて盛り上がる、みたいな(笑)」

我妻「以前は美桜や実希ちゃん、阿部という先輩たちの存在もあって、3期生はすごく年下に見られることが多かったし、“3期生”というよりは“新メンバー”と呼ばれていたのもあって、萎縮していたんだろうなとは思います。」
吉田「ちょっと怖かった(笑)」
我妻「そうだよね(笑) 先輩たちがいないところで3人でこっそりわちゃわちゃする、みたいな。だから逆に4期生が入ってきてからは、すごいやりたい放題になっちゃった(笑)」
吉田「もうすごい自由なんですよ!4期生は3期生が入ったばかりの頃に比べて最初から自由!」
星「入って何日しない内にもう『○○ちゃんって呼んでいいですか!?』って。」
吉田「私たちが入ってきたときはレッスンも正座して、お水も飲んでいいかわからなくて。でもこの子たち(4期生)が入ってきたときは空気が違った!」
我妻「そうね~、全然違った(笑)」

4期生「いやぁ…。」

戸羽「もちろんあったんですけど…」
我妻&3期生「ウソーっ!?」
戸羽「いやちょっとふざけることもあったんですけど、やっぱり真面目なときはちゃんとしようとは…。」
井上「絶対ウソ!(笑)」
戸羽「えー!なんでー!」

我妻「そうかもしれないです(苦笑)」
吉田「でも前も先輩(1期生、2期生)は先輩でフレンドリーに接してくれていたなって思います。上は上で雰囲気を賑やかにして、私達を引っ張ってくれていたなって。」
我妻「初期メンバーは、新メンバーが入ってくるという行事に慣れていたというのもあるかな。阿部が入ってきたときは、私達と歳も近いし、彼女も大人っぽかったし、私達が特別緊張したりすることもなかったけど、3期生のときは『チビッ子たちが入ってくるぞ~!』という感じがすごくて。だから空気の違いとかも感じたし、どうやって接していこうと考えたりして。4期生が入ってきたときは3期生が入ってきたときの経験があるから、私達も緊張しないで迎えられました。」

我妻「4期生が入ってきて、視界がクリアになったなって。『これからのハコムスは、こういう風に進んでいくんだ』という方向性、ハコムスの未来像がちょっと見えたというか。この6人(3期生、4期生)がどう成長していくのか、これからどういう人間になるのかとか、すごく楽しみに思ったし、この夏を通して成長したなって思うところもすごくいっぱいあるし。その分、私はどうしてもレベルの高いものを求めてしまうから、3期生・4期生が失敗することもいっぱいあるんだけど、そういうのも全部ひっくるめて、これからが楽しみだなって。逆に変わらないでいてもらいたいのは、さっきリハーサルのときにも言ったんですけど…」


それはリハーサル中、『ありがとう!おともだち。』の確認が行われたときだった。3期生・4期生共に、振付もフォーメーションも曖昧で、明らかな練習不足が露見したのだ。特に4期生にとっては初めて挑む楽曲ではあったが、だからといって未完成のものを舞台で披露するわけにはいかない。
プロデューサーからも今まで以上に厳しい言葉が飛んだ。そんな中、リーダー我妻が口を開いた。「私もこの曲は大好きだから。だから、いつも『私が、ハコムスがカバーして良いのか?』っていう気持ちでいるんだ。曲にはさ、ファンの人の思い入れがあるんだよ。こんなんじゃ、やるのが申し訳無いよ。これならやらない方がいい。」。そう語る我妻の目からは、次第に大粒の涙が溢れ出していった。ファンの間ではハロー!プロジェクトアイドルが好きなことで有名な我妻ではあるが、好きなアイドルの曲だからという気持ちだけからくる発言ではないだろう。『ありがとう!おともだち。』はハコムス初期から歌い続けている大切な曲の一つなのだ。我妻は続ける。「宝くじライブは皆がお金を使ってくじを買ってくれる。来てくれるお客さんは、それだけ私たちに期待してくれているんだよ。ステージに立つ責任をもっと持って欲しい。別に今すぐにってわけじゃないけどさ、こんなんじゃ私だって心配で、不安で、卒業なんかできないよ。」。“卒業”というワードはいつ聞いても我々アイドルファンは慣れることができない。それはアイドルにとってもそうなのだろう。この一言で場の空気は重くなった。だが、決して冷たい空気ではなかった、と記者は思う。

我妻「どうしてもハコムスってメンバーの入れ替えがあるじゃないですか。卒業したり、お休みがいたり、新メンバーが入ったり。構成がすごく変わりやすいし、ライブによって人数が違うことも多くて、なかなか安定というものが無い。多分これから先もそういうグループであるのだろうなって思う。だけど、そういう転がり易いハコムスを真っ直ぐ支えているものって、やっぱりハコムスがやっているカバー曲なんじゃないかなって思うんです。今日のセットリストが段々と歴史を遡るような感じだったじゃないですか。私、特に『Be My Diamond!』を歌っているときに、振り入れした当時を思い出したり、あの時期って他にあんな曲歌っていたなぁ~とか、あの曲もまたやりたいなぁ~って思うことが多くあって。多分そういう想い出って、皆(3期生、4期生)にもこれから出来てくるだろうし、私はそういう想い出ばっかりで今3年ちょっとハコムスをやっているんです。ハコムスがやるカバー曲“だけ”を後輩につなぐのではなくて、曲にある背景とか、そのときのハコムスはどうだったのかとか、そういうところまで私が伝えることができたら、多分皆がこれから未来のハコムスを作っていくにあたって、カバー曲が力になっていけると思う。私が伝えていけるのは本当にそういうことだけだと思うから。思い出とか、そのときの感情とか、忘れていることもやっぱりあるし、事細かに伝えることはできないけど、そのときの空気感とかを皆に伝えていけたらいいなって。それが、私が…、いつかね、いつかだよ?(笑) いつかハコムスを辞めることになったときにも、皆がしっかりと受け継いでいってもらえたらいいなぁ~、なんて。」

星「ハコイリ♡ムスメって他のアイドルさんと違う所で最初に思い浮かぶのは、やっぱりカバー曲がすごくたくさんあるところだと思うんです。80~90年代の懐かしい曲を歌うのをコンセプトとしているところも。ぽにょちゃんがボイトレやレッスン中、ライブの前とかにもよく言ってくれるのですけど、一曲一曲ごとにイメージとか、例えば『この曲はただ失恋の悲しい歌というだけではなくて、強い力も秘めているんだよ』とか。」
我妻「そんな詩的なこと言ったかな?」
星「あ、いや(笑) でも、曲に込められたことについてとか、よく教えてくれます!」

鈴木P「あの、すみません、ちょっといいですか?」
一同「?」
鈴木P「塩野さん、起きてますか?」

一同「ちょ、大丈夫!?アレ大丈夫!?」
我妻「絶対寝てるよ!」
塩野「だいじょぶです。」(←全然大丈夫じゃない)

塩野「げんきです。」(←全然元気じゃない)
我妻「虹は“目を開けたまま心で寝る”という技があって。あの※1小松さんもよく心で寝てました。あ、どうぞ続けてください(笑)」
※1 小松もか。オリジナルメンバーの一人で元パフォーマンスリーダー。2016年7月にグループを卒業した。

星「えっと…(笑) だから曲の雰囲気ってすごく大事で。私は一つの曲を一人の人間と思うようにしています。一つの曲には一人の人間みたいにたくさんの感情が含まれているから。そういうこともぽにょちゃんが教えてくれるし、私達も大事にしていくべきだなって思います。そういうのをイメージして、その人物になりきって歌うことで、ライブも成功すると思うので。そこがハコムスの“変わらないところ”だと思うし、常に“新しい挑戦”でもあると思っています。」

星「後輩ができたことについては、3期生にとって初めてのことで私達も慣れてなかったし、最初はどう接していいかわからなかったです。3期生って、先輩たちの中にポンって入ったときも、あまりしゃべれなかったり、結構人見知りしちゃったりすることがあって。だから4期生ともどう絡んだらいいかわからなかったんです。だけど4期生の方から私たちに話しかけてくれて。なーちゃんから、『りなちゃんって呼んでいいですか~?』って聞かれたとき、もうその時点で嬉しくなっちゃいました。すぐに『いいよ!』って。今となっては私は遊ばれてしまっているんですけどね(笑)」

星「無いです(笑) “星ママ”とか冗談で言ってくるのも別に嫌じゃないし、そういう風に言ってくれるのはそれだけ心を許してくれているんだろうなって。3期生も4期生も対等な関係だと思えて嬉しく思います。」

井上「私たちが新メンバーで入った頃も、この3期生の中でたまにピリピリしちゃうときとかもあって。誰かと誰かが仲良くしてたりすると、残りの誰かが置いてかれちゃう。4期生も同じ感じで、懐かしいな~って。」
我妻「一年そこらしか経ってないんだから懐かしまないで!(笑)」
吉田「私は里奈ちゃんと言い合ったときもあったんですよ!泣きながら電話したこともあった。」
我妻「あったね~。本当にケンカしてたもんね。」
吉田「私たちは“そういうケンカをする仲”だった。和花と虹とかもよくケンカしてるんですけど、そういうときは2人とも私に相談してきたりして。私たちは先輩にそういうことを相談することがあまりなかった。4期生からガツガツ頼ってきてくれるのが、自分たちとしてもやりやすいです。」
星「私たちももっと先輩に頼るべきだったなって、4期生を見ていると思いますね。」

我妻「私が今一番年上で、リーダーという肩書もあって。何かと物事をまとめなきゃいけないことも多くて。そういう中で、例えばレッスンで私が端的に何かを指摘したときに、最近はそれを3期生がフォローして、噛み砕いて、わかりやすくしてから4期生に伝えていて。そういう面で頼もしくなったなぁ~って思いますから。私はあまり中に割って入るのは好きではないのでアレなのですけど、今あそこで何かトラブってるなぁ~と思うときは人間模様をよく観てから、そ~っと入って手助けするようにしています。」

4期生「…。」
吉田「あんま感じてない!!(泣)」
戸羽「いやそんなことない!(笑)」
井上「wi-fi使いまくってるもんね。」
我妻「出たよ、ポケットwi-fiの話ね。」
寺島「姫月が通信制限かかったときに急に『和花!わいふぁい!』って言われて。」
我妻「そういうときだけ先輩の力を発揮するんだよね。」
寺島「でもそのときwi-fiの電源が入らなくて使えなかったんですよ。だからそう言ったら、怒って拗ねだして。(井上を見ながら)またそういう風に睨んでくる~!」
井上「頼りない先輩なんで~。」
星「虹ちゃん、姫月ちゃんに靴下取られてるよね?」
塩野「そう!」 (←覚醒)
我妻「やばい、姫月のボロが出始めた(笑)」
塩野「レッスンで姫月が靴下を忘れたとき、私のを貸したんです。赤いラインが入った黒い靴下!一週間経って返してほしいって言ったら『え~わかんない~。今度探しとくね~。』って。ずーっと経ってから、また靴下返して欲しいって言ったら『え?そんなのないよ』とか言ってきて。」
寺島「そういうの多い!」
井上「え、でも待って!和花のは返したよ!」
寺島「いや聞いて!姫月はレッスンにサンダルで来ることが多いから靴下を忘れることが多くて、靴下2足持ってる私たちが貸すんですけど、返ってこないんです。」
井上「待って!和花のは返し…、あ、ズボンは返してない。」
我妻「返しなさいよ!」
―――借りパク多いですね…(汗)
寺島「レッスン用のお気に入りのズボンだったんですよ。」
井上「早く返すね~。」
寺島「絶対ウソだ。」
井上「タンスの中にある!しまってある!」
一同「しまうなよ!!!」

我妻「ハコムスはファンの人たちも仲良いんだろうなというのを、ステージの上に立っていると伝わってきます。ハコムスから広がるコミュニティというものがあるんだなと感じることが最近よくあって。だからハコムスも長く続くグループであってほしいなって。今時のアイドルって花火のように一瞬でいなくなってしまうことも多いじゃないですか。それってやっぱりファンの人たちもすごく寂しい気持ちになっちゃう。だからハコムスはいつでもファンの人たちが帰って来られる場所でありたい。長く続くって難しいし、マンネリ化してしまうこともあると思う。私達が満足してしまうと、そこでファンの人たちにつまらないなって思われてしまうかもしれないので、いつでもその時にできるパフォーマンスというのを探している状態です。今年の秋冬はそういうのがカタチになるんじゃないかっていうのが楽しみなところでもあるんですけど。やっぱり長く続く中で、その時々にしか感じられない楽しみというのを絶やさずに続けていけるグループであって欲しいなって。その気持ちがファンの人たちにもしっかり伝わって、愛情の深い、あたたかいグループに発展していけたらいいなって思います。」

星「私は受験勉強でお休みに入っちゃうんですけど、もしも私が休まず続けていたらこんな風になっていたんだろうなと思い描くものもあります。それがお休みになっちゃって少し寂しいですけど、また4月に皆と会えるのも楽しみです。4月になって戻った時に、私だけレベルが落ちてたりしたら怖いなと不安なので、そうならないようにはしたいです。ただ今はそれを言っても仕方ないので、今のハコムスをより多くの人に知ってもらって、ハコムスの輪を広げていきたいです。対バンで初めて知って来てくれる人も最近多く増えてきて、ハコムスの輪の広がりを感じます。」

吉田「私は里奈ちゃんがお休みに入ることもあって、今回の秋冬は私にとっても、ハコムスにとっても、今後に影響するすごく大事な時期になると思っています。里奈ちゃんが帰ってきたらまた私が(ポジションを)下がるのではなく、一緒にユニットを組めたりしたときはすごいなって思われるようになりたい。その為に自分の目標をちゃんと作って。かれんちゃんや美桜ちゃんも戻ってきたときには、ハコムスすごいことになってる!と思われたいです。」

井上「私も里奈ちゃんが戻ってくるまでに成長していたいというのもあるけど、今は万葉がこういう風に頑張ろうとしているのをフォローできるようになりたいです。今度また万葉が高校受験とかでお休みすることになったら、そのときは私がレベルアップする番になればいいのかなって。」

戸羽「私は、里奈ちゃんがいなくなるとMCも桃実ちゃんが一人でやることになるし、自分もできれば参加したいです。」

寺島「戸羽が言うように、今MCは桃実ちゃんや里奈ちゃんに頼りっぱなしで。里奈ちゃんがお休みになったとき穴が空いたと思われるのは嫌だから、4期生も自分から何かできるようになりたい。そしていつか桃実ちゃんが卒業するときに、スタッフさんやファンの方々を不安にさせないように、早く先輩たちに追いつきたいです。」

塩野「 」
我妻「おはようございます!!」
塩野「!?」


塩野「私は今自分に足りないものがたくさんありすぎて困ってるんですけども…。里奈ちゃんやてっちゃんやかれんちゃんが勉強頑張ってるから、虹もその間に歌が上手になれるように頑張っていきたいなと思います!」

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全ての密着取材スケジュール終了後、私は中野に向かっていた。先に始まっていた知り合いのハコムスファンたちの飲み会、いわゆるヲタ飲みに誘われた為だ。アキバではなく中野なのは、この日ハコムス卒業生の一人である門前亜里が出演する舞台劇が中野で行われており、そちらを観劇していたヲタクたちも合流するからである。
居酒屋に着くと、先に始めていたはずのヲタク達は思いのほか静かだった。なぜなら皆が耳にイヤホンを当てて音楽を聴いていたからである。実はこの場にジュークボックス賞当選者が数名おり、今日手に入れたCDをいち早く聴かんと、その内の一人がポータブルプレイヤーを持参していたのだった。
広義で言えばこのジュークボックス賞も、楽曲をカバーしたということになるのだろう。当選者は各々が好きな曲、思い入れのある曲、メンバーに歌って欲しい曲など、いろいろな理由で選曲をした。 実は私も当選者の一人だ。私は辛い時期によく聴いていた曲を選択した。アイドルソングではあるが、この曲に何度も助けられた想い出がある。出来上がったCDを聴いた私は、改めてもう一度心が救われた気がした。想い出の曲とは言っても、それまでは辛い時期を共に過ごした悲しい曲だった。だが生まれ変わったそれは、とても前向きな曲に感じたのだ。


今回ハコイリ♡ムスメを密着取材してみて、強く印象に残ったことは、リーダー我妻も言った『ハコムスがカバー曲を歌うことの意味』『ステージに立つ責任』についてだ。

ライブで他のアーティストの曲をカバーするアイドルは少なくない。元々オリジナルソングを持たないアイドルも多いし、敢えてカバーソングばかり歌うことをコンセプトにしたアイドルも存在する。 カバーソングを歌うとき、自分のファンは目の前にいる数十~数百人だけかもしれないが、歌っているカバー曲の向こうには、実は何万人というファンが存在するかもしれない。その曲、そしてそれを歌うオリジナルのアーティストに思い入れのあるファンたちの存在である。

楽曲に込められているものを咀嚼し、反芻することで初めてその曲を自分たちの表現で歌うことができる。そのときこそ、曲が自分たちの想い出の一つとなり、つまり初めて“自分たちの曲”となるのではないかと思う。
ハコムスが歌うカバー曲に元々想い出を持っている人もいる。私はというと、ほとんどの曲をリアルタイムでは知らず、ハコムスが歌って初めて知る曲の方が圧倒的に多い。だからハコムスが扱うカバー曲のほとんどは、私にとってはまだハコムスとの想い出しか存在しない。
だが、曲が歌い継がれるというのは、ひょっとしたらそんな風に曲に新しい想い出が付け加えられていくことなのかもしれない。今までの想い出が存在した人々も、またそこに新しくハコムスとの想い出が付け加えられていく。私が受け取ったジュークボックス賞のCDを聴いたとき、曲が生まれ変わったように感じたのも同じことなのだろう。
ハコムスが過去の名曲をカバーして歌うことで、その曲に想い出のある人を喜ばせることができるのはもちろん、また新たにその人の心に何かを残すことができる。それが楽曲を生かし続けることにつながるし、彼女たち自身が人々の想い出となることで、曲と一緒にハコムスの輪を広げることにもつながる。そんな活動を3年以上続けてきたハコムスはカバーソングを歌っていながらも、そこに確固たるオリジナリティが存在しているように感じる。

そして、一年前と変わらず彼女たちはステージに立つこと、ライブをすることに対して実直であり、真摯であった。楽曲やパフォーマンスへ込める想いの強さはもちろん、メンバーも、スタッフも、本当にファンのことをよく考えている。自分たちの成長に繋がることと、ファンを楽しませる為になることの両方を大切にしているというのが随所に窺えた。そして今、その活動を何よりも楽しんでいる。

そんな彼女たちの気持ち、想いや努力というものが果たしてファンに伝わっているのかということについてだが、居酒屋にて今日のライブの感想やメンバーの事について笑顔で語るヲタクたちの姿を見るに、それは言及する必要もないだろう。

今回、私は初めて“柵の前”に入った。最前席よりも更に前、いつもより彼女たちに一歩近づいた場所だ。
こんなにステージに近くて、彼女たちとの間に隔たりの無い空間は、ファンならば嬉しくて当たり前なのだが、生憎取材中はそんな余裕は全く無く、シャッターを切ることとメモを取ることに追われた。 ただ、ライブ中カメラを下ろし、ふと顔を上げたときのこと。ステージ上では本当に楽しそうに踊り、客席に向かって歌声を届けるメンバーの姿が、そして客席には彼女たちの気持ちに応えて声援を返すファンの人々の笑顔が見えた。

“柵の前”から見えたのは、そんなあたたかく幸せな気持ちが絶えず行き交っているハコイリ♡ムスメのライブであった。



「第4回 ハコムス宝くじライブ」セットリスト (曲名/オリジナルアーティスト):
1.色・ホワイトブレンド/中山美穂
2.真夏の恋のファンファーレ/ハコイリ♡ムスメ
3.ガンバレ乙女(笑)/アイドリング!!!
4.ガールズ・オン・ザ・ルーフ/渡辺美奈代
5.アンブレラ・エンジェル/おニャン子クラブ
6.じゃあね/おニャン子クラブ
7.ありがとう!おともだち。/Berryz工房
8.Be My Diamond!/ribbon
ex.リトル☆デイト/ribbon (特賞による新カバー曲)

以上